特約の有効性に関しての判例4~更新料特約は消費者契約法に反し無効
大阪高裁判決 平成21年8月27日
事案の概要
賃借人は,賃貸人との間のマンション賃貸借契約の締結時に、保証金35万円を、及び契約更新時に更新料特約に基づき更新料11万6000円をそれぞれ支払ったが,本件賃貸借契約の約定中、解約引き特約(敷引き特約)及び本件更新料特約が消費者契約法10条により無効である旨主張して、敷金契約終了に基づき被告が返還すべき義務があることを自認した5万円を含めた保証金35万円及び不当利得返還請求権に基づき,更新料11万6000円の返還を求めて提訴したものである。
更新料特約の検討
大阪高裁は、以下の事情を総合的に考慮して「更新料特約が消費者契約法の見地から信義則に反して消費者の利益を一方的に害するかどうか。」を判断すべきであると示しています。
1.更新料特約の内容。
2.更新料特約が置かれている趣旨、目的及び根拠。
3.契約当事者の情報収集力等の格差の状況、程度、消費者が趣旨を含めて契約条項を理解できるものであったかどうか等の契約条項の定め方。
4.更新料特約の内容が具体的かつ明確に説明されたかどうか等の契約に至る経緯。
5.消費者が契約条件を検討する上で事業者と実質的に対等な機会を付与され自由にこれを検討していたかどうか。
判決の要旨
大阪高裁は、上記(1)ないし(5)の事情について以下のような判断を示しました。
1.本件賃貸借契約の賃貸借期間は1年間と短いにもかかわらず、更新料の金額は10万円であり月額賃料の金額(4万5000円)と比較して、かなり高額といえる。
2.借地借家法上、賃貸借契約の更新拒絶・解約申し入れには正当事由が必要であり、建替えが予定されているなど、例外的な場合を除き、正当事由が認められる可能性は低いこと、本件の更新料特約の定め方、更新後の賃貸借契約期間が短いこと、更新料が定額のままで変更することが予定されていないことなどに鑑みれば、本件更新料特約には、賃貸人が主張するような更新拒絶権放棄の対価、賃借権強化の対価、賃料補充の性質を有しない。
したがって、本件更新料特約は、法律的に説明することが困難でその趣旨、目的及び根拠が明らかでない。
3.賃貸借契約書には、賃貸人による更新拒絶には正当事由を要することなどがあえて記載されていない。
4.賃貸人は、賃借人に対し更新料特約が置かれている目的・法的根拠・性質・法定更新の場合には更新料を支払う必要がないことなどを説明していない。
5.賃借人は、正当事由がない限り賃貸借契約は法定更新され、その場合には更新料を支払う必要性がないことなどを知らずに更新料特約を締結している。したがって、賃借人が契約条件を検討する上で事業者と実質的に対等な機会を付与され自由にこれを検討していたとはいえない。
以上のような判断を示したうえで、本件更新料特約は、消費者契約法10条に違反し無効であるとしました。